解法

【慶應義塾大学の入試問題を解説!】2018年度入試 慶應義塾大学 理工 数学 1

2018年度入試 慶應義塾大学 理工 数学 1
の解説を行います。

それでは問題を見てみましょう。

2018年度入試 慶應義塾大学 理工 数学 1

2018年度入試 慶應義塾大学 理工 数学 1(1)

マスマスターの思考回路

$y=x+\cfrac{1}{x}$という式が与えられていますが、$x$が分母に使用されているので、暗黙的に$x\neq0$となります。

また、yの満たす「2次方程式」を問われていますので、$y=x+\cfrac{1}{x}$を二乗し、yの二次式を作り出しましょう。

$$\begin{align} y=x+\cfrac{1}{x} \end{align}$$

(1)式を二乗すると、

$$\begin{align} y^2&=&x^2+2+\cfrac{1}{x^2} \end{align}$$

マスマスターの思考回路

(2)式(2次式)を$x^4-2x^3+3x^2-2x+1=0$に代入するために、$x^4-2x^3+3x^2-2x+1=0$を$x^2\neq0$で割って2二次式にしましょう。

$$\begin{array}{rcl} x^4-2x^3+3x^2-2x+1&=&0 \end{array}$$

を$x^2\neq0$で割ると、

$$\begin{array}{rcl} x^2-2x+3-\cfrac{2}{x}+\cfrac{1}{x^2}&=&0 \\\\ x^2+\cfrac{1}{x^2} -2x-\cfrac{2}{x}+3&=&0 \end{array}$$ $$\begin{align} x^2+\cfrac{1}{x^2} -2\left(x+\cfrac{1}{x}\right)+3&=&0 \end{align}$$

(2)式より、

$$\begin{array}{rcl} x^2+\cfrac{1}{x^2}&=&y^2-2 \end{array}$$

であり、これと(1)式を(3)式に代入すると、

$$\begin{array}{rcl} (y^2-2) -2y+3&=&0 \\\\ y^2 -2y+1=0 \end{array}$$

よって、

(ア)$y^2 -2y+1 $

となります。

$$\begin{array}{rcl} y^2 -2y+1&=&0 \\\\ (y-1)^2 &=& 0\\\\ y&=&1 \end{array}$$

であり、これを(1)式に代入すると、

$$\begin{array}{rcl} 1&=&x+\cfrac{1}{x} \\\\ x&=&x^2+1 \\\\ x^2-x+1&=&0 \\\\ x&=& \cfrac{1\pm\sqrt{3}i}{2} \end{array}$$

よって、

(イ)$x= \cfrac{1\pm\sqrt{3}i}{2}$

となります。

2018年度入試 慶應義塾大学 理工 数学 1(2)

マスマスターの思考回路

$x^3+y^3$という式は、三乗の式の計算を用いて $x^3+y^3=(x+y)^3-3xy(x+y)$または、$x^3+y^3=(x+y)(x^2-xy+y^2)$と変形し計算を行うことが一般的です。
本問の場合は前者の方が与えられた条件との相性が良いですね。
これを利用し、計算を行いましょう。

$$\begin{array}{rcl} x^3+y^3+xy-3&=&0 \\\\ (x+y)^3-3xy(x+y)+xy-3&=&0 \end{array}$$

これに、$s=x+y, ~t=xy$を代入すると、

$$\begin{array}{rcl} s^3-3ts+t-3&=&0 \\\\ t(1-3s)&=&3-s^3 \end{array}$$ $$\begin{align} t(3s-1)&=&s^3-3 \end{align}$$

$s=\cfrac{1}{3}$とすると、(4)式について、
左辺 = $0$
右辺 = $\cfrac{1}{27}-3\neq0$

よって、$s\neq\cfrac{1}{3}$なので、

$$\begin{align} t&=&\cfrac{s^3-3}{3s-1} \\ \end{align}$$

(ウ) $t =\cfrac{s^3-3}{3s-1}$

となります。

マスマスターの思考回路

次に「$s$のとりうる値の範囲」を求めますが、$s$は実数であることしか値の範囲としての条件がありません。
しかし、$s=x+y, ~t=xy$と定義されていることから、解と係数の関係により、$x, ~y$は二次方程式$u^2-su+t=0$の実数解になります。
この二次方程式が二次方程式の解と判別式により、実数解を持たなければならないということを切り口に進めましょう。

$x, ~y$は$u^2-su+t=0$の実数解であるので、

$$\begin{array}{rcl} s^2-4t \geqq 0 \end{array}$$

であり、これに(5)式を代入すると、

$$\begin{array}{rcl} s^2-4 \cdot \cfrac{s^3-3}{3s-1} \geqq 0 \end{array}$$

マスマスターの思考回路

分母の$3s-1$を払ってしまいたいのですが、その符号がわからないため、$3s-1$をかけるとすると場合分けが必要になります。
しかし、$(3s-1)^2$(つまり正の数)をかけてしまえば場合分けは不要になります。

$$\begin{array}{rcl} s^2(3s-1)^2-4(3s-1)(s^3-3) \geqq 0\\\\ (3s-1)\{s^2(3s-1)-4(s^3-3)\} \geqq 0\\\\ (3s-1)(3s^3-s^2-4s^3+12) \geqq 0\\\\ (3s-1)(-s^3-s^2+12) \geqq 0\\\\ (3s-1)(s^3+s^2-12) \leqq 0 \end{array}$$ $$\begin{align} (3s-1)(s-2)(s^2+3s+6) \leqq 0 \end{align}$$

マスマスターの思考回路

(6)式内の$s^2+3s+6$は簡単に因数分解できませんね。
そもそも$s^2+3s+6=0$は、判別式$D=3^2-4\cdot1\cdot6=9-24<0$より、実数解がないことがわかります。 よって、$s^2+3s+6>0$で割ってしまいましょう。

$$\begin{array}{rcl} s^2+3s+6 &=& \left(s+\cfrac{3}{2}\right)^2-\cfrac{9}{4} + 6\\\\ &=& \left(s+\cfrac{3}{2}\right)^2+\cfrac{13}{4} > 0 \end{array}$$

であり、(6)式を$s^2+3s+6$で割ると、

$$\begin{array}{rcl} (3s-1)(s-2) \leqq 0\\\\ \cfrac{1}{3} \leqq s \leqq 2 \end{array}$$

$s\neq\cfrac{1}{3}$であるから、

$$\begin{array}{rcl} \cfrac{1}{3} < s \leqq 2 \end{array}$$

よって、

(エ)$\cfrac{1}{3} < s \leqq 2$

となります。

2018年度入試 慶應義塾大学 理工 数学 1(3)

マスマスターの思考回路

$(x-1)(x^{3n}-1)$と$(x^3-1)(x^{n}-1)$はその式の形を見るに、実数範囲内で共通因数を持っていそうです。
ある式がある式で割り切れるかどうかは、それらの共通因数を除外した結果の式が割り切れるかどうかに一致します。
簡単に因数分解できる範囲内での共通因数を除き、問題を簡単にしましょう。

$$\begin{align} (x-1)(x^{3n}-1) &=& (x-1)(x^n-1)(x^{2n}+x^n+1) \end{align}$$

また、

$$\begin{align} (x^3-1)(x^{n}-1) &=& (x-1)(x^2+x+1)(x^{n}-1) \end{align}$$

であり、(7)式が(8)式で割り切れるかどうかを調べることは、各式の共通因数である$(x-1)(x^{n}-1)$を除いた結果である、下の(9)式が(10)式で割り切れるかどうかを調べることと同値になります。

$$\begin{align} x^{2n}+x^n+1 \end{align}$$ $$\begin{align} x^2+x+1 \end{align}$$

マスマスターの思考回路

これで少し問題が簡単になりました。

ある式がある式で割り切れることを言うには、割る式の全ての因数が、割られる式の因数でもあることを示せば良いでしょう。

$x^2+x+1=0$の解の一つを$\omega$とすると、$\omega^2+\omega+1=0, ~\omega^3=1$が成り立ちます。

また、$\omega$の共役複素数 $\overline{\omega}$ も$x^2+x+1=0$の解なので、$\overline{\omega}^2+\overline{\omega}+1=0$が成り立ちます。

$x^2+x+1$を$f(x)$とおくと、

$$\begin{array}{rcl} f(\omega) &=& 0 \end{array}$$ $$\begin{array}{rcl} f(\overline{\omega}) &=& 0 \end{array}$$

であるから、因数定理により$f(x)$は$(x-\omega)$と$(x-\overline{\omega})$を因数に持ちます。(それ以外には因数は持ちません。)

マスマスターの思考回路

あとは、$x^{2n}+x^n+1$が$(x-\omega)$と$(x-\overline{\omega})$を因数に持つことが確認できれば証明が完了します。

ここで、$n=3m+1$($m$は$0$以上の整数)、$x^{2n}+x^n+1$を$g(x)$とおくと、

$$\begin{array}{rcl} g(x) &=& x^{2n}+x^n+1 \\\\ &=& x^{2(3m+1)}+x^{3m+1}+1 \\\\ &=& x^{6m+2}+x^{3m+1}+1 \\\\ &=& x^{6m}\cdot x^2+x^{3m}\cdot x+1 \\\\ &=& (x^3)^{2m}\cdot x^2+(x^3)^{m}\cdot x+1 \end{array}$$

であり、

$$\begin{array}{rcl} g(\omega) &=& (\omega^3)^{2m}\cdot \omega^2+(\omega^3)^{m}\cdot \omega+1 \\\\ &=& \omega^2+\omega+1 \\\\ &=& 0 \end{array}$$

よって、因数定理により$g(x)$は$x-\omega$を因数に持ちます。

また、

$$\begin{array}{rcl} g(\overline{\omega}) &=& (\overline{\omega}^3)^{2m}\cdot \overline{\omega}^2+(\overline{\omega}^3)^{m}\cdot \overline{\omega}+1 \\\\ &=& \overline{\omega}^2+\overline{\omega}+1 \\\\ &=& 0 \end{array}$$

よって、因数定理により$g(x)$は$x-\overline{\omega}$を因数に持ちます。

以上により、$(x-1)(x^{3n}-1)$は$(x^3-1)(x^{n}-1)$で割り切れることが証明されました。

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プロフィール

-このサイトの記事を書いている人-

某国立大工学部卒のwebエンジニアです。
学生時代に塾講師として勤務していた際、生徒さんから「解説を聞けば理解できるけど、なぜその解き方を思いつくのかがわからない」という声を多くいただきました。
授業という限られた時間の中ではこの声に応えることは難しく、ある程度の理解度までに留めつつ、繰り返しの復習で覚えてもらうという方法を採らざるを得ないこともありました。
本ブログでは「数学の問題を解くための思考回路」に重点を置いています。
それらを通じて自らの力で問題を解決する力が身につくお手伝いができれば幸いです。

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