【基礎知識】乃木坂46の「いつかできるから今日できる」を数学的命題として解釈する
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基礎知識
基礎知識
因数定理は高次方程式(一般に三次以上の方程式のことをいう)を解くために欠かすことのできない、とても重要な定理です。
一次方程式は「x= 〜 」の形に等式変形することによって、
二次方程式は解の公式を使用することによって、機械的に解くことができますが、
三次以上の方程式については機械的に解くことができません。
マスマスターの思考回路
今回は因数定理の説明を行い、因数定理を利用して実際に高次方程式を解いてみたいと思います。
目次
ある式がいくつかの式の積によってのみ表すことができるとき、その各構成要素のことを因数といいます。
平たくいうと、つまり約数のことだと思って構いません。
例えば、$6$は$6=2$×$3$のように、積の形に表すことができ、かけ算に使用されている$2$と$3$は$6$の因数であるといいます。
例えば、13÷2という割り算を考えます。
13÷2 = 6…1ですね?
この割り算の結果が正しいかどうかを検算しましょう。
2×6+1 = 13
となり、計算は正しいことが確認できました。
ここで重要なことは、割り算の式はかけ算の式として表すことができるという点になります。
つまり、
割られる数 = 割る数 × 商 + 余り
と表すことができるということです。
さて本題の因数定理についてですが、因数定理とは次のことをいいます。
多項式$f(x)$が$(x-a)$を因数に持つことの必要十分条件は、$f(a)=0$である。
一般に、
割られる数 = 割る数 × 商 + 余り
と表すことができますので、
割られる数 : $f(x)$
割る数 : $(x-a)$
商 : $Q(x)$
余り : $R$
とすると、
$$\begin{array}{rcl} f(x) = (x-a)Q(x)+R \end{array}$$と表すことができます。
$f(x)$が$(x-a)$を因数に持つとき、$f(x)$は$(x-a)$で割り切れなければなりません。
つまり、$f(x)$を$(x-a)$で割ったときの余りは0になります。
よって、
$$\begin{array}{rcl} f(x) &=& (x-a)Q(x)+R \\\\ &=& (x-a)Q(x)+0 \\\\ &=& (x-a)Q(x) \end{array}$$これに$x=a$を代入すると、
$$\begin{array}{rcl} f(a) &=& (a-a)Q(x) \\\\ &=& 0 \end{array}$$となります。
に$x=a$を代入すると、
$$\begin{array}{rcl} f(a) &=& (a-a)Q(x)+R \\\\ &=& 0Q(x)+R \\\\ &=& R \end{array}$$ここで、仮定$f(a)=0$より、$R=0$となる(つまり、余りが0となるので$(x-a)$割り切れている)ので、多項式$f(x)$は$(x-a)$を因数に持つことになります。
十分性と必要性の証明ができたので、
因数定理
多項式$f(x)$が$(x-a)$を因数に持つことの必要十分条件は、$f(a)=0$である。
が証明されました。
因数定理について理解できましたか?
この段階ではしっかり理解できていなくても問題ありません。
実例を通して理解を深めていきましょう。
因数定理を利用して$x^3+2x^2-5x-6=0$を解いてみます。
因数定理は、$f(x)$が$(x-a)$を因数に持つことの必要十分条件は、$f(a)=0$であるというものですが、
この$f(a)=0$に着目します。なぜなら今は$f(x)$の因数$(x-a)$が具体的に何かがわかっていないからです。
マスマスターの思考回路
因数$(x-a)$がわかっているならば、それを使って因数分解すれば問題は解けてしまいます。
その$(x-a)$が何かを求めるために、$f(a)=0$となる$a$を「見つける」のです。
その結果として因数$(x-a)$が具体的に何かがわかります。
ここで重要なのが$f(a)=0$となる$a$を「見つける」ということです。
$x$に適当な値を代入していき、$f(a)=0$が成立する場合を見つけます。
「見つける」という作業は、因数分解のたすきがけと同じ感覚になります。
実際に試してみて、うまくいけばそれが答えだと判断するという方針になります。
$f(x)=x^3+2x^2-5x-6$とおき、$x$に適当な値を代入していきます。
$$\begin{array}{rcl} f(1) &=& 1+2-5-6 \\\\ &=& -8 \neq 0 \end{array}$$ $$\begin{array}{rcl} f(2) &=& 8+8-10-6 \\\\ &=& 0 \end{array}$$$f(a)=0$は$a=2$のとき成立することが「見つかり」ました。
因数定理より$f(2)=0$であることから、$f(x)$は$(x-2)$を因数に持つことがわかります。
つまり$f(x)$は$(x-2)$で割り切れるので、実際に割り算を行うと、
となります。$x^2+4x+3$は中学数学の知識で因数分解ができますので、因数分解すると、
$$\begin{array}{rcl} f(x) &=& (x-2)(x+1)(x+3) \end{array}$$となります。
よって、$x^3+2x^2-5x-6=0$の解は、$x=2, -1, -3$であることがわかりました。
$f(a)=0$となる$a$の値が複雑な数である場合、その数を見つけることは現実的にはできないと考えてください。
しかし、高次方程式の解の値が必要とされる問題では、$f(a)=0$となる$a$の値は簡単な整数値(負の数の場合もあります)になるように問題の作成者が設定してくれています。
つまり、いくつか簡単な整数値を代入すれば$f(a)=0$となる$a$の値は見つかるようになっています。
それでも見つからない場合は、計算が間違っているか、解を求める必要性のない問題であると推測されます。
正しい計算と問題把握ができていれば$f(a)=0$となるaが見つからなくて困る場合は無いので、心配することはありません。
「見つける」という作業は、因数分解のたすきがけと同じ感覚になります。
たすきがけでは、まず最高次の項の係数と最低次の項(定数)に着眼しましたよね?
高次方程式についてもそれは同様です。
例えば、$x$の$n$次方程式が有理数解$x=\cfrac{b}{a}$(ただし$a\neq0$)をもつとき、方程式は
$(ax-b)(c_1x^{n-1} + c_2x^{n-2} + \cdots + c_n)=0$と表すことができます。
これを展開したときの最高次の項の係数と最低次の項(定数)はそれぞれ、$ac_1, ~ -bc_n$となり、
$a, ~b$はそれぞれ、最高次の項の係数の約数と最低次の項(定数)の約数であることがわかります。
よって、有理数解$x=\cfrac{b}{a}$は、最低次の項(定数)の約数($=b$)を最高次の項の係数の約数($=a$)で割ったものに限られることになります。
よって、先の例題$x^3+2x^2-5x-6=0$については、最低次の項(定数)の約数( $= \pm1$, $\pm2$, $\pm3$, $\pm6$)を最高次の項の係数の約数($= \pm1$)で割った値($= \pm1$, $\pm2$, $\pm3$, $\pm6$)のいずれかが$f(a)=0$をみたすことになります。
何を代入すれば$f(a)=0$をみたすかが全くわからないよりは、いくつかの候補がわかっていた方が気持ち的にも楽ですよね?
闇雲に代入を試していくよりは候補を事前に絞った方が効率的ですので、ぜひこのように候補を絞って計算を進めるようにしましょう。
慣れてくると高次方程式の各項の符号と絶対値を見ただけで、$f(a)=0$となる$a$の値が何になりそうか、検討をつけることができるようになっていきます。
慣れないうちは地道に計算し、その過程でコツをつかんでいけると良いと思います。
【基礎】方程式・式と証明のまとめ
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-このサイトの記事を書いている人-
某国立大工学部卒のwebエンジニアです。
学生時代に塾講師として勤務していた際、生徒さんから「解説を聞けば理解できるけど、なぜその解き方を思いつくのかがわからない」という声を多くいただきました。
授業という限られた時間の中ではこの声に応えることは難しく、ある程度の理解度までに留めつつ、繰り返しの復習で覚えてもらうという方法を採らざるを得ないこともありました。
本ブログでは「数学の問題を解くための思考回路」に重点を置いています。
それらを通じて自らの力で問題を解決する力が身につくお手伝いができれば幸いです。
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実は、三次・四次方程式の解の公式は存在していますのでそれを使えば機械的に解くことが可能ですが、高校数学の学習内容には含まれていませんので因数定理により解を求めることとなります。
ちなみに五次以上の方程式の解の公式は存在しないことが証明されています。