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【基礎知識】乃木坂46の「いつかできるから今日できる」を数学的命題として解釈する

乃木坂46 いつかできるから今日できる

最近、「いつかできるから今日できる」という乃木坂46さんの曲があることを知ったのですが、随分数学的なタイトルだと私は感じました。
それは「いつかできるから今日できる」は、数学における命題と解釈することができるからです。

今回は「いつかできるから今日できる」を命題の基礎を理解するための題材とさせていただき、これが数学的に正しいかどうかについても考えてみたいと思います。

いつかできるから今日できる(通常盤)

「いつかできるから今日できる」は命題の一種です

まずは命題とは何か説明しておきましょう。

命題とは

式や文章で表された事柄で、正しいか正しくないかが明確に決まるものを命題といいます。
また、命題が正しいときその命題はであるといい、正しくないときはであるといいます。

一つの命題は二つの条件p, qによって与えられます。
命題「pならばq」は、

    \begin{eqnarray*}p \Rightarrow q \\\end{eqnarray*}

と表すことができ、このときのp仮定といい、q結論といいます。

「いつかできるから今日できる」がなぜ命題か

先に述べたように、「式や文章で表された事柄で、正しいか正しくないかが明確に決まるもの」を命題といいます。

当たり前ですが、「いつかできるから今日できる」は文章で表された事柄です。

あとは、正しいか正しくないかが明確に決まるかどうかが、命題であるかどうがの判断基準になります。

「いつかできるから今日できる」について、それが本当に今日できたのなら「正しく」、今日できなかったのなら「正しくない」と判断することができますので、正しいか正しくないかは明確に決まることになります。

よって、「いつかできるから今日できる」は命題です。

命題でないものの例

命題でないとみなされるような例は次のようなものがあります。

「100は大きい数である」

この例の場合の「大きい」は、何をもって「大きい」とするかの基準が決まっておらず、判断が主観に委ねられることになります。このような場合は命題とはいいません。

「100は1000より大きい数である」

となっていれば命題であると言えます。(100は1000より小さいので、この命題は偽となりますが、命題としては成立しています。)

マスマスターの思考回路

「いつかできるから今日できる」は命題ではない。と意見をもたれる方も多数いらっしゃると思います。

  • 「いつか」って具体的にいつ?
  • 「できる」って何を?
  • 「できる」からといって「やる」とは限らない。

など、不確定なことが多数あります。
しかし結論部分は「できる」か「できない」かの二値ですので、「正しい」か「正しくない」かが明確に決まるものとみなすこともできるでしょう。「いつかできるから今日できる」は命題であるということにして、話を進めていきます。

命題の真偽判定基準

命題の真偽を判定するには集合という概念に対する知識が必要になります。

この場合の集合は、「明日何時にどこに集合ね」といったような場合の集合とは異なります。

集合について説明しましょう。

集合とは

数学では、範囲がはっきりしたものの集まりを集合といいます。

この説明だけではよくわからないですね。具体例を見てみましょう。

集合の具体例

1から5までの自然数を考えます。

このとき、自然数の集合をAとすると、A=\{1, 2, 3, 4, 5\}と表します。
また、偶数の集合をBとすると、B=\{2, 4\}と表すことができます。

\{\}の中に書かれているそれぞれを要素といいます。

二つの集合を図にすると下のようになります。

集合

2と4は偶数なので集合Bの中に存在していますが、1と3と5は偶数ではないので集合Bの中に存在することはできません。
つまり、1と3と5は集合Bの外に存在し、これらすべての数を内側に含むように集合Aが存在しているという状況になります。

集合を用いた命題の真偽判定

上図の集合について、次の命題を考えます。

集合A=\{1, 2, 3, 4, 5\}
集合B=\{2, 4\}
について、
命題:集合Bの要素は、集合Aの要素である。

この命題はになります。

上図を見てみると、集合Bに含まれるどの要素についても、集合Aの中に存在していますよね?
2はAの要素でもあるし、4はAの要素でもあるから命題は真になります。

集合Bのどの要素についても集合Aに含まれるということは、当然といえば当然ですね?集合Bは集合Aの内部にすっぽり収まってしまっているのですから。

このとき、集合Bは集合Aに含まれるといい、

    \begin{eqnarray*}B \subset A \\\end{eqnarray*}

と表します。

そして、ある集合がある集合に含まれているかどうかを包含関係といい、ある集合がある集合に含まれているかどうかが命題の真偽判定基準となります

例えば、集合Aを、A=\{1, 2, 3\}、集合Bを、B=\{2, 4\}と定義すると、B \subset Aは成立しません。
これを図にすると下のようになります。

集合を用いた命題の真偽判定

集合Bに含まれる要素4は集合Aにも存在している要素ではありませんので、集合Aの内部に存在することはできません。
よって、集合Bが集合Aからはみ出したような状況になっています。

このとき、再度同じ命題を考えてみましょう。

集合A=\{1, 2, 3\}
集合B=\{2, 4\}
について、
命題:集合Bの要素は、集合Aの要素である。

集合Bの要素4は、命題本文中の「集合Bの要素」であることを満たしていますが、「集合Aの要素」ことは、である満たしていません。

よって、この命題はになります。
仮定を満たしてはいるが結論を満たさない例が一つでもある場合、命題は偽となります。
ここが命題について混乱しやすいところだと思いますので注意してください。

命題「いつかできるから今日できる」の真偽を判定する

さて、ここまでで「いつかできるから今日できる」の真偽を判定する準備が整いました。
真偽判定を行っていきましょう。

「いつかできるから今日できる」について、
仮定pは「いつかできる」
結論qは「今日できる」になります。

このときの、

    \begin{eqnarray*}p \Rightarrow q \\\end{eqnarray*}

の真偽を判定しましょう。

ここで、命題本文中の「いつかできる」は「今はできない」ものとします。
「今できるにも関わらずやらない」場合は除外します。
最短で1時間後にできるようになるものとして、pの集合Pを考えます。

P = { 1時間後にできる, 2時間後にできる, \cdots , 明日できる, 明後日できる, \cdots }

qの集合Qは簡単のため、そのままQ = {今日できる} とします。

これを図にすると次のようになります。

いつかできるから今日できる

集合PQについて、包含関係p \subset qが成立していません。
これにより、命題「いつかできるから今日できる」はになります。

「いつかできるから今日できる」はず

残念ながら、命題「いつかできるから今日できる」は偽になってしまいました。

ということは、乃木坂46さんの「いつかできるから今日できる」というメッセージをそのまま受け取ってはいけないのでしょうか?
いや、そんなはずはありません。「いつかできるから今日できる」は多くの方に勇気を与え続けている、素晴らしい曲なのです
数学的に偽であろうが、この事実は変わりません。

数学でいうところの偽は、「必ずそうなるとは言いきれない」ことをもって偽とするのです。
これは同時に「いつかできるから今日できる(かもしれないし、実際に今日できることもありうる)」ということを意味しています。

決して「今日はできない」と断定しているわけではないということも、命題を理解するうえで重要なので覚えておきましょう。

次回、引き続き、乃木坂46の「いつかできるから今日できる」を題材とし、必要十分条件についての説明を行っていきます。

【基礎知識】乃木坂46の「いつかできるから今日できる」から学ぶ必要十分条件

【基礎】集合と命題のまとめ

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