解法

【東大の入試問題を解説!】2019年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第5問

2019年度東大入試第5問目を扱います。
それでは問題を見てみましょう。

2019年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第5問

2019年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第5問(1)

マスマスターの思考回路

y=x^{2n-1}y=\cos x のグラフを描いてから方針を決めることとしましょう。
このとき y=x^{2n-1} は奇関数であることに注意すると、およそ下のようなグラフが描けることとなります。

2019年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第5問(1)

マスマスターの思考回路

0<x<\cfrac{\pi}{2} の範囲で x^{2n-1} = \cos x をみたす x が存在することは明らかですね。
f(x) = x^{2n-1}-\cos x とおき、f(x)=0 となる実数 x がただ一つであることを示しましょう。

    \begin{eqnarray*} f(x) = x^{2n-1}-\cos x \\\\ \end{eqnarray*}

とおくと、

    \begin{eqnarray*} f'(x) = (2n-1)x^{2n-2}+\sin x \\\\ \end{eqnarray*}

マスマスターの思考回路

0<x<\cfrac{\pi}{2} の範囲では \sin x >0 なので、明らかに f'(x)>0 ですが、それ以外の範囲ときは \sin x <0 となることもあるので、一概に f'(x)>0 と言えるかどうかはわかりません。 場合を分けて考えましょう。

0<x<\cfrac{\pi}{2} のとき

明らかに f'(x)>0 が成り立ち、

    \begin{eqnarray*} f(0) = -1 < 0 \\\\ \end{eqnarray*}

    \begin{eqnarray*} f (\cfrac{\pi}{2}) = (\cfrac{\pi}{2})^{2n-1} > 0 \\\\ \end{eqnarray*}

であることから、 x^{2n-1} = \cos x の実数解は一つ存在します。

\cfrac{\pi}{2} \leqq x のとき

    \begin{eqnarray*} (\cfrac{\pi}{2})^{2n-1} \leqq x^{2n-1} \\\\ 1 < (\cfrac{\pi}{2})^{2n-1} \leqq x^{2n-1} \\\\ \cos x \leqq 1 < (\cfrac{\pi}{2})^{2n-1} \leqq x^{2n-1} \\\\ \end{eqnarray*}

であることから、 x^{2n-1} = \cos x の実数解は存在しません。

x = 0 のとき

f(0) = 0-1 = -1 \neq 0 より、 x=0x^{2n-1} = \cos x の実数解とはなりません。

-\cfrac{\pi}{2} < x < 0 のとき

    \begin{eqnarray*} x^{2n-1} < 0 \\\\ 0< \cos x <1 \\\\ \end{eqnarray*}

であることから、 x^{2n-1} = \cos x の実数解は存在しません。

x \leqq -\cfrac{\pi}{2} のとき

    \begin{eqnarray*} x^{2n-1} \leqq (-\cfrac{\pi}{2})^{2n-1} \\\\ \end{eqnarray*}

マスマスターの思考回路

上の式は 2n-1 乗(つまり奇数乗)であることにより成立しています。
偶数乗であれば不等号の向きは逆転します。

    \begin{eqnarray*} x^{2n-1} &\leqq& (-\cfrac{\pi}{2})^{2n-1} < -1 \\\\ x^{2n-1} &\leqq& (-\cfrac{\pi}{2})^{2n-1} < -1 \leqq \cos x \\\\ \end{eqnarray*}

であることから、 x^{2n-1} = \cos x の実数解は存在しません。

以上により、x^{2n-1} = \cos x の実数解はただ一つであることが示されました。

2019年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第5問(2)

マスマスターの思考回路

設問(1)より、x^{2n-1} = \cos x のただ一つの実数解 a_n0<a_n<\cfrac{\pi}{2} をみたすことがわかっています。これを切り口として進めましょう。

設問(1)より、0<a_n<\cfrac{\pi}{2} が成立します。

ここで、

    \begin{eqnarray*} 0<a_n<1<\cfrac{\pi}{2} \\\\ \end{eqnarray*}

であり 0<x<\cfrac{\pi}{2} のとき、\alpha < \beta について、 \cos \alpha > \cos \beta となるので、

(1)   \begin{eqnarray*} \cos a_n > \cos 1 \\\\ \end{eqnarray*}

が成り立つことが示されました。

2019年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第5問(3)

マスマスターの思考回路

a_nx^{2n-1} = \cos x の解であることをまだ利用していませんので、 a_nx^{2n-1} = \cos x に代入してみましょう。

aを求める

a_nx^{2n-1} = \cos x の解なので、

(2)   \begin{eqnarray*} a_n^{2n-1} &=& \cos a_n \\\\ \end{eqnarray*}

(1), (2)式より、

    \begin{eqnarray*} a_n^{2n-1} = \cos a_n > \cos 1 \\\\ \cos 1 < a_n^{2n-1} \\\\ (\cos 1)^{\frac{1}{2n-1}} < a_n \\\\ (\cos 1)^{\frac{1}{2n-1}} < a_n < 1 \\\\ \end{eqnarray*}

ここで

    \begin{eqnarray*} \lim_{n \to \infty} (\cos 1)^{\frac{1}{2n-1}} = 1 \\\\ \end{eqnarray*}

なのではさみうちの原理より、

(3)   \begin{eqnarray*} a = \lim_{n \to \infty} a_n = 1 \\\\ \end{eqnarray*}

となります。

bを求める

(2)式より、

    \begin{eqnarray*} a_n^{2n} &=& a_n\cos a_n \\\\ \end{eqnarray*}

(4)   \begin{eqnarray*} a_n^{n} &=& \sqrt{a_n\cos a_n} \\\\ \end{eqnarray*}

(3), (4)式より、

    \begin{eqnarray*} b &=& \lim_{n \to \infty} a_n^n \\\\ &=& \lim_{n \to \infty} \sqrt{a_n\cos a_n} \\\\ &=& \sqrt{a\cos a} \\\\ \end{eqnarray*}

(5)   \begin{eqnarray*} &=& \sqrt{\cos 1} \\\\ \end{eqnarray*}

となります。

cを求める

(3), (4), (5)式を用いると

    \begin{eqnarray*} c &=& \lim_{n \to \infty} \cfrac{a_n^n-b}{a_n-a} \\\\ &=& \lim_{n \to \infty} \cfrac{\sqrt{a_n\cos a_n}-\sqrt{\cos 1}}{a_n-1} \\\\ \end{eqnarray*}

マスマスターの思考回路

\cfrac{\sqrt{a_n\cos a_n}-\sqrt{\cos 1}}{a_n-1}y=\sqrt{x\cos x} という関数を考えた場合の平均変化率を意味する式の形をしていますので、平均値の定理を使うことを考えましょう。

ここで g(x)=\sqrt{x\cos x} とおくと平均値の定理より、

    \begin{eqnarray*} \cfrac{\sqrt{a_n\cos a_n}-\sqrt{\cos 1}}{a_n-1} = \cfrac{g(a_n)-g(1)}{a_n-1} = g'(b_n) \\\\ \end{eqnarray*}

をみたす a_n<b_n<1 が存在し、(3)式より

    \begin{eqnarray*} \lim_{n \to \infty} a_n = 1 \\\\ \end{eqnarray*}

なので、はさみうちの原理より

    \begin{eqnarray*} \lim_{n \to \infty} b_n = 1 \\\\ \end{eqnarray*}

よって、

    \begin{eqnarray*} c &=& \lim_{n \to \infty} \cfrac{\sqrt{a_n\cos a_n}-\sqrt{\cos 1}}{a_n-1} \\\\ &=& \lim_{n \to \infty} \cfrac{g(a_n)-g(1)}{a_n-1} \\\\ &=& \lim_{n \to \infty} g'(b_n) \\\\ &=& g'(1) \\\\ \end{eqnarray*}

ここで

    \begin{eqnarray*} g'(x) &=& \cfrac{\cos x -x\sin x}{2\sqrt{x\cos x}} \\\\ \end{eqnarray*}

なので、

    \begin{eqnarray*} c &=& \cfrac{\cos 1 -1\sin 1}{2\sqrt{1\cos 1}} \\\\ &=& \cfrac{\cos 1 -\sin 1}{2\sqrt{\cos 1}} \\\\ \end{eqnarray*}

となります。

プロフィール

-このサイトの記事を書いている人-

某国立大工学部卒のwebエンジニアです。
学生時代に塾講師として勤務していた際、生徒さんから「解説を聞けば理解できるけど、なぜその解き方を思いつくのかがわからない」という声を多くいただきました。
授業という限られた時間の中ではこの声に応えることは難しく、ある程度の理解度までに留めつつ、繰り返しの復習で覚えてもらうという方法を採らざるを得ないこともありました。
本ブログでは「数学の問題を解くための思考回路」に重点を置いています。
それらを通じて自らの力で問題を解決する力が身につくお手伝いができれば幸いです。

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