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【慶應義塾大学の入試問題を解説!】2018年度入試 慶應義塾大学 理工 数学 3

2018年度入試 慶應義塾大学 理工 数学 3
の解説を行います。

それでは問題を見てみましょう。

2018年度入試 慶應義塾大学 理工 数学 3

2018年度入試 慶應義塾大学 理工 数学 3(1)

マスマスターの思考回路

素直に計算してみましょう。

    \begin{eqnarray*}a_1 &=& \int_0^1 (1-x^2)^{\frac{1}{2}} dx \\\\\end{eqnarray*}

マスマスターの思考回路

1-x^2が含まれた積分は、三角関数を用いた置換積分によりうまく計算することができます。

x = \sin \theta とおくと、 \cfrac{dx}{d\theta}=\cos \thetaであり、x \to 1のときには、\theta \to \cfrac{\pi}{2} となります。

よって、

    \begin{eqnarray*}a_1 &=& \int_0^{\frac{\pi}{2}} (1-\sin^2 \theta)^{\frac{1}{2}} \cos \theta d\theta \\\\&=& \int_0^{\frac{\pi}{2}} (\cos^2 \theta)^{\frac{1}{2}} \cos \theta d\theta \\\\&=& \int_0^{\frac{\pi}{2}} \cos^2 \theta d\theta \\\\\end{eqnarray*}

マスマスターの思考回路

三角関数の二乗の積分は、三角関数の半角公式を用いて計算を行いましょう。

    \begin{eqnarray*}a_1 &=& \int_0^{\frac{\pi}{2}} \cfrac{1 + \cos 2\theta}{2} d\theta \\\\&=& \cfrac{1}{2} \left[\theta + \cfrac{\sin 2\theta}{2} \right]_0^{\frac{\pi}{2}} \\\\&=& \cfrac{1}{2} \left[ (\cfrac{\pi}{2} + 0) - (0+0)\right] \\\\&=& \cfrac{1}{2} \cdot \cfrac{\pi}{2} \\\\&=& \cfrac{\pi}{4} \\\\\end{eqnarray*}

よって、

(サ) \cfrac{\pi}{4} となります。

マスマスターの思考回路

次に、問題文で指示のある通り、部分積分法を用いて計算を行いましょう。

先のa_1の計算では置換積分を用いましたが、ここでは部分積分という指定があるのでそれに従います。

    \begin{eqnarray*}a_n &=& \int_0^1 (1-x^2)^{\frac{n}{2}} dx \\\\&=& \int_0^1 x'(1-x^2)^{\frac{n}{2}} dx \\\\&=& \left[ x(1-x^2)^{\frac{n}{2}} \right]_0^1 - \int_0^1 x (\frac{n}{2}) (1-x^2)^{\frac{n}{2} - 1}(-2x) dx \\\\&=& 0 + n \int_0^1 x^2(1-x^2)^{\frac{n}{2} - 1} dx \\\\\end{eqnarray*}

マスマスターの思考回路

(1-x^2)^{\frac{n}{2} - 1} の左に付いている x^2 が邪魔になって積分計算ができません。 そこで、x^2(1-x^2) の形に無理矢理に変形することを考えます。

つまり、x^2 = \{-(1-x^2)+1\}と変形しましょう。

    \begin{eqnarray*}a_n &=& n \int_0^1 \{-(1-x^2)+1\} (1-x^2)^{\frac{n}{2} - 1} dx \\\\&=& n \left[ -\int_0^1 (1-x^2)^{\frac{n}{2} - 1+1} dx + \int_0^1 (1-x^2)^{\frac{n}{2} - 1} dx \right] \\\\&=& n \left[ -\int_0^1 (1-x^2)^{\frac{n}{2}} dx + \int_0^1 (1-x^2)^{\frac{n-2}{2}} dx \right] \\\\&=& n ( -a_n + a_{n-2} ) \\\\(n+1)a_n &=& n a_{n-2} \\\\\end{eqnarray*}

(1)   \begin{eqnarray*}a_n &=& \cfrac{n}{n+1} ~ a_{n-2} \\\\\end{eqnarray*}

よって、

(シ) \cfrac{n}{n+1} となります。

2018年度入試 慶應義塾大学 理工 数学 3(2)

マスマスターの思考回路

(1)式のa_n &=& \cfrac{n}{n+1} ~ a_{n-2} に、 a_{n-1} をかけると、目的の a_n a_{n-1} の形が作れますね。

    \begin{eqnarray*}a_n &=& \cfrac{n}{n+1} ~ a_{n-2} \\\\\end{eqnarray*}

の両辺に a_{n-1} をかけると、

(2)   \begin{eqnarray*}a_n a_{n-1} &=& \cfrac{n}{n+1} ~ a_{n-1}a_{n-2} \\\\\end{eqnarray*}

上式に n=n-1 を代入すると、

(3)   \begin{eqnarray*}a_{n-1} a_{n-2} &=& \cfrac{n-1}{n} ~ a_{n-2}a_{n-3} \\\\\end{eqnarray*}

(3)式を(2)式に代入すると、

    \begin{eqnarray*}a_n a_{n-1} &=& \cfrac{n}{n+1} \cdot \cfrac{n-1}{n} ~ a_{n-2}a_{n-3} \\\\\end{eqnarray*}

これを繰り返すと、

    \begin{eqnarray*}a_n a_{n-1} &=& \cfrac{n}{n+1} \cdot \cfrac{n-1}{n} \cdots \cfrac{n-k+1}{n-k+2} ~ a_{n-k}a_{n-(k+1)} \\\\\end{eqnarray*}

n-(k+1) = 0 、つまり k=n-1 のとき、

    \begin{eqnarray*}a_n a_{n-1} &=& \cfrac{n}{n+1} \cdot \cfrac{n-1}{n} \cdots \cfrac{2}{3} ~ a_{1}a_{0} \\\\&=& \cfrac{2}{n+1} ~ a_{1}a_{0} \\\\\end{eqnarray*}

(サ)の結果より、a_1 = \cfrac{\pi}{4}なので、

    \begin{eqnarray*}a_n a_{n-1} &=& \cfrac{2}{n+1} \cdot \cfrac{\pi}{4} ~ a_{0} \\\\&=& \cfrac{\pi}{2(n+1)} ~ a_{0} \\\\\end{eqnarray*}

ここで、

    \begin{eqnarray*}a_{0} &=& \int_0^1 (1-x^2)^0 dx \\\\&=& \int_0^1 1 dx \\\\&=& \left[ x \right]_0^1 \\\\&=& 1 - 0 \\\\&=& 1 \\\\\end{eqnarray*}

より、

(4)   \begin{eqnarray*}a_n a_{n-1} &=& \cfrac{\pi}{2(n+1)} \cdot 1 \\\\&=& \cfrac{\pi}{2(n+1)} \\\\\end{eqnarray*}

よって、

(ス) \cfrac{\pi}{2(n+1)} となります。

2018年度入試 慶應義塾大学 理工 数学 3(3)

マスマスターの思考回路

\cfrac{a_n}{a_{n-1}} の一般項を求めることは難しそうなので、はさみうちの原理を用いて極限値を求めることを考えます。
a_na_{n-1} の大小関係を比較しましょう。

a_n の定義から、0 \leqq x \leqq 1 であり、

    \begin{eqnarray*}0 \leqq x \leqq 1 \\\\0 \leqq x^2 \leqq 1 \\\\-1 \leqq -x^2 \leqq 0 \\\\0 \leqq 1-x^2 \leqq 1 \\\\\end{eqnarray*}

よって、

    \begin{eqnarray*}0 < (1-x^2)^{\frac{n}{2}} &<& (1-x^2)^{\frac{n-1}{2}} \\\\ 0 < \int_0^1 (1-x^2)^{\frac{n}{2}} dx &<& \int_0^1 (1-x^2)^{\frac{n-1}{2}} dx \\\\ \end{eqnarray*}

(5)   \begin{eqnarray*} 0 < a_{n} &<& a_{n-1} \\\\ \end{eqnarray*}

(5)式に、(1)式を代入すると、

    \begin{eqnarray*} \cfrac{n}{n+1} ~ a_{n-2} &<& a_{n-1} \\\\ \cfrac{n}{n+1} &<& \cfrac{a_{n-1}}{a_{n-2}} \\\\ \end{eqnarray*}

上式に、 n=n+1 を代入すると、

(6)   \begin{eqnarray*} \cfrac{n+1}{n+2} &<& \cfrac{a_{n}}{a_{n-1}} \\\\ \end{eqnarray*}

(5)式より、

(7)   \begin{eqnarray*} \cfrac{a_{n}}{a_{n-1}} < 1 \end{eqnarray*}

(6), (7)式より、

(8)   \begin{eqnarray*} \cfrac{n+1}{n+2} < \cfrac{a_{n}}{a_{n-1}} < 1 \\\\ \end{eqnarray*}

ここで、

    \begin{eqnarray*} && \lim_{n \to \infty} \cfrac{n+1}{n+2} \\\\ &=& \lim_{n \to \infty} \cfrac{1+\cfrac{1}{n}}{1+\cfrac{2}{n}} \\\\ &=& \cfrac{1+0}{1+0} \\\\ &=& 1 \\\\ \end{eqnarray*}

よって、(8)式において、はさみうちの原理より、

    \begin{eqnarray*} \lim_{n \to \infty} \cfrac{a_{n}}{a_{n-1}} &=& 1 \\\\ \end{eqnarray*}

よって、 \cfrac{a_{n}}{a_{n-1}}1 に収束することが証明されました。

2018年度入試 慶應義塾大学 理工 数学 3(4)

マスマスターの思考回路

(3)まで設問が用意されたうえで、(4)の問題文に「以上の結果を用いると」と書かれていることから、直前の設問(3)を利用する可能性は濃厚と思われます。

(8)式をもとに、 a_{n-1} を削除する方針で進めてみましょう。

(4)式より、

    \begin{eqnarray*}a_{n-1} &=& \cfrac{\pi}{2(n+1)a_n} \\\\\end{eqnarray*}

であり、これを(8)式に代入すると、

    \begin{eqnarray*}&& \cfrac{n+1}{n+2} < \cfrac{2(n+1)a^2_{n}}{\pi} < 1 \\\\ && \cfrac{\pi}{2(n+1)} \cdot \cfrac{n+1}{n+2} < a^2_{n} < \cfrac{\pi}{2(n+1)} \cdot 1 \\\\ && \cfrac{\pi}{2(n+2)} < a^2_{n} < \cfrac{\pi}{2(n+1)}\\\\ \end{eqnarray*}

マスマスターの思考回路

\sqrt{n}a_n の極限値を求めなければならないのですが、 a^2_{n} に関する不等式が出来上がってしまいました。 n a^2_{n} に関する不等式に変形し、その平方根を考えることにしましょう。

    \begin{eqnarray*} && \cfrac{n\pi}{2(n+2)} < na^2_{n} < \cfrac{n\pi}{2(n+1)} \\\\ \end{eqnarray*}

(9)   \begin{eqnarray*} && \sqrt{\cfrac{n\pi}{2(n+2)}} < \sqrt{n}a_{n} < \sqrt{\cfrac{n\pi}{2(n+1)}} \\\\ \end{eqnarray*}

ここで、

    \begin{eqnarray*} && \lim_{n \to \infty} \sqrt{\cfrac{n\pi}{2(n+2)}} \\\\ &=& \lim_{n \to \infty} \sqrt{\cfrac{\pi}{2(1+\frac{2}{n})}} \\\\ &=& \sqrt{\cfrac{\pi}{2}} \\\\ \end{eqnarray*}

また、

    \begin{eqnarray*} && \lim_{n \to \infty} \sqrt{\cfrac{n\pi}{2(n+1)}} \\\\ &=& \lim_{n \to \infty} \sqrt{\cfrac{\pi}{2(1+\frac{1}{n})}} \\\\ &=& \sqrt{\cfrac{\pi}{2}} \\\\ \end{eqnarray*}

(9)式において、はさみうちの原理より、

    \begin{eqnarray*} \lim_{n \to \infty} \sqrt{n}a_{n} &=& \sqrt{\cfrac{\pi}{2}} \\\\ \end{eqnarray*}

よって、

(セ) \sqrt{\cfrac{\pi}{2}} となります。

プロフィール

-このサイトの記事を書いている人-

某国立大工学部卒のwebエンジニアです。
学生時代に塾講師として勤務していた際、生徒さんから「解説を聞けば理解できるけど、なぜその解き方を思いつくのかがわからない」という声を多くいただきました。
授業という限られた時間の中ではこの声に応えることは難しく、ある程度の理解度までに留めつつ、繰り返しの復習で覚えてもらうという方法を採らざるを得ないこともありました。
本ブログでは「数学の問題を解くための思考回路」に重点を置いています。
それらを通じて自らの力で問題を解決する力が身につくお手伝いができれば幸いです。

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