公式

ヘロンの公式の証明

ヘロンの公式は、三角形の3辺の長さから面積を求めるための公式です。

なぜ3辺の長さから面積が求められるのでしょうか?そもそも三角形の面積は「底辺 × 高さ ÷ 2」なので、高さがわからなければ面積もわからないのではないのでしょうか?

三角形の合同条件の一つである「3辺がそれぞれ等しい」が成立すれば合同です。つまり、3辺の長さによって三角形の形状は1通りに定まり、同時に面積も1通りに定まります。

だから高さがわからなくても、面積はわかってしまうということにつながるのですね。

今回はそんなヘロンの公式について説明していきましょう。

ヘロンの公式

ヘロンの公式

上図の三角形の面積 S は、

    \begin{eqnarray*} S &=& \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)} \end{eqnarray*}

ただし、 s = \cfrac{a+b+c}{2}

ヘロンの公式の証明

辺の長さが a, b である2辺の間の角を \theta とします。

三角比を用いた三角形の面積より、

(1)   \begin{eqnarray*} S &=& \cfrac{1}{2} ~ab \sin \theta \\\\ \end{eqnarray*}

余弦定理より、

(2)   \begin{eqnarray*} \cos \theta &=& \cfrac{a^2 + b^2 -c^2}{2ab} \\\\ \end{eqnarray*}

三角比の相互関係式より、

(3)   \begin{eqnarray*} \sin ^2 \theta + \cos ^2 \theta &=& 1 \\\\ \end{eqnarray*}

(2)式を(3)式に代入すると、

    \begin{eqnarray*} \sin ^2 \theta + \left( \cfrac{a^2 + b^2 -c^2}{2ab} \right) ^2 &=& 1 \\\\ \end{eqnarray*}

これを計算すると、

    \begin{eqnarray*} \sin ^2 \theta &=& 1 - \left( \cfrac{a^2 + b^2 -c^2}{2ab} \right) ^2 \\\\ &=& \left(1 + \cfrac{a^2 + b^2 -c^2}{2ab} \right) \left(1 - \cfrac{a^2 + b^2 -c^2}{2ab} \right) \\\\ &=& \left(\cfrac{2ab + a^2 + b^2 -c^2}{2ab} \right) \left(\cfrac{2ab - a^2 - b^2 + c^2}{2ab} \right) \\\\ &=& \left(\cfrac{a^2 + 2ab + b^2 -c^2}{2ab} \right) \left(\cfrac{ - (a^2 - 2ab + b^2) + c^2}{2ab} \right) \\\\ &=& \left(\cfrac{(a+b)^2 -c^2}{2ab} \right) \left(\cfrac{ - (a-b)^2 + c^2}{2ab} \right) \\\\ &=& \cfrac{1}{4a^2b^2} \left( (a+b)^2 -c^2 \right) \left( c^2 - (a-b)^2 \right) \\\\ &=& \cfrac{1}{4a^2b^2} (a+b+c)(a+b-c)(c+a-b)(c-a+b) \\\\ \end{eqnarray*}

\sin \theta > 0 より、

(4)   \begin{eqnarray*} \sin \theta &=& \cfrac{1}{2ab} \sqrt{(a+b+c)(a+b-c)(c+a-b)(c-a+b) }\\\\ \end{eqnarray*}

(4)式を(1)式に代入すると、

    \begin{eqnarray*} S &=& \cfrac{1}{2} ~ab \cdot \cfrac{1}{2ab} \sqrt{(a+b+c)(a+b-c)(c+a-b)(c-a+b) } \\\\ &=& \cfrac{1}{4} \sqrt{(a+b+c)(a+b-c)(c+a-b)(c-a+b) } \\\\ \end{eqnarray*}

ここで、 s = \cfrac{a+b+c}{2} とおき、上式に代入すると

    \begin{eqnarray*} S &=& \cfrac{1}{4} \sqrt{(2s)(2s-2c)(2s-2b)(2s-2a) } \\\\ &=& \cfrac{1}{4} \sqrt{2(s)2(s-c)2(s-b)2(s-a) } \\\\ &=& \sqrt{s(s-c)(s-b)(s-a) } \\\\ \end{eqnarray*}

以上により、

    \begin{eqnarray*} S &=& \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)} \end{eqnarray*}

ただし、 s = \cfrac{a+b+c}{2}

が証明されました。

ヘロンの公式の説明の終わりに

いかがでしたか?

ヘロンの公式は、辺の長さだけで面積が求められるという点については有用なのですが、辺の長さに無理数が含まれる場合などは計算が煩雑になる場合があります。

またヘロンの公式は、三角比に関する基礎的かつ必須の重要公式をもとに成立しているという背景もありますので、ヘロンの公式に頼りすぎず、ヘロンの公式を導くために使用した公式だけを用いて面積を求められるようにしておきましょう。

【三角比】三角比のまとめ

プロフィール

-このサイトの記事を書いている人-

某国立大工学部卒のwebエンジニアです。
学生時代に塾講師として勤務していた際、生徒さんから「解説を聞けば理解できるけど、なぜその解き方を思いつくのかがわからない」という声を多くいただきました。
授業という限られた時間の中ではこの声に応えることは難しく、ある程度の理解度までに留めつつ、繰り返しの復習で覚えてもらうという方法を採らざるを得ないこともありました。
本ブログでは「数学の問題を解くための思考回路」に重点を置いています。
それらを通じて自らの力で問題を解決する力が身につくお手伝いができれば幸いです。

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