解法

【東大の入試問題を解説!】2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第2問

2018年度東大入試第2問目を扱います。
それでは問題を見てみましょう。

2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第2問

2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第2問(1)

マスマスターの思考回路

\cfrac{a_n}{a_{n-1}}を計算したいのですが、与えられたa_nはそのまま計算できるものではありません。
また、a_nの計算もa_{n-1}の計算も添字が違うだけで計算内容としては同じなので、まずはa_nをできるだけシンプルな形にしておき、これをa_na_{n-1}に代入すると少しは楽ができるかもしれません。

まずはa_n組み合わせの計算を用いて書き下します。

    \begin{eqnarray*}a_n &=& \frac{\displaystyle \frac{(2n+1)!}{n!\{(2n+1)-n\}!}}{n!} \\\\&=& \frac{(2n+1)!}{(n!)^2 (n+1)!} \\\\&=& \frac{(2n+1)(2n)(2n-1) \cdots (n+2)(n+1)!}{(n!)^2 (n+1)!} \\\\&=& \frac{(2n+1)(2n)(2n-1) \cdots (n+2)}{(n!)^2} \\\\\end{eqnarray*}

これを\displaystyle \frac{a_n}{a_{n-1}}に代入すると、

    \begin{eqnarray*}\frac{a_n}{a_{n-1}} &=& \frac{\displaystyle \frac{(2n+1)(2n)(2n-1) \cdots (n+2)}{(n!)^2}}{\displaystyle \frac{\{2(n-1)+1\}\{2(n-1)\}\{2(n-1)-1\} \cdots \{(n-1)+2\}}{\{(n-1)!\}^2}}\\\\&=& \frac{\displaystyle \frac{(2n+1)(2n)(2n-1) \cdots (n+2)}{(n!)^2}}{\displaystyle \frac{(2n-1)(2n-2)(2n-3) \cdots (n+1)}{\{(n-1)!\}^2}}\\\\&=& \frac{\{(n-1)!\}^2 (2n+1)(2n)(2n-1) \cdots (n+2)}{(n!)^2 (2n-1)(2n-2)(2n-3) \cdots (n+1) }\\\\&=& \left\{ \frac{(n-1)!}{n!} \right\}^2 \frac{(2n+1)(2n)}{(n+1) }\\\\&=& \left( \frac{1}{n} \right)^2 \frac{(2n+1)(2n)}{(n+1) }\\\\&=& \frac{2(2n+1)}{n(n+1)}\\\\\end{eqnarray*}

となります。

マスマスターの思考回路

分数式としての計算上は \cfrac{2(2n+1)}{n(n+1)} で完結し既約分数となりましたが、これが値として既約分数であるかどうかを確認する必要があります。

分母のn(n+1)は偶数なので、分子の2と約分することが可能です。
つまり、\cfrac{2(2n+1)}{n(n+1)}は既約分数ではないので、これをそのまま回答とすることはできません。

分母と分子を2で割りましょう。

    \begin{eqnarray*}\frac{a_n}{a_{n-1}} &=& \frac{2(2n+1)}{n(n+1)}\\\\&=& \frac{(2n+1)}{\displaystyle \frac{n(n+1)}{2}}\\\\\end{eqnarray*}

これにより、p_n=\cfrac{n(n+1)}{2},  q_n = 2n+1となります。

2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第2問(2)

マスマスターの思考回路

(1)でa_na_{n-1}の比を求めたので、両者の大小関係を利用するという推測を立てます。
大小関係は比の値によって決定されますので、比の値について調べてみましょう。

f(n)= \cfrac{a_n}{a_{n-1}} = \cfrac{2(2n+1)}{n(n+1)} とおきます。

商の微分の公式を用いて微分します。

    \begin{eqnarray*} f'(n) &=& \displaystyle \frac{4n(n+1)-2(2n+1)(2n+1)}{\{n(n+1)\}^2} \\\\ &=& \displaystyle \frac{4n^2 +4n-2(4n^2 + 4n + 1)}{\{n(n+1)\}^2} \\\\ &=& \displaystyle \frac{-4n^2 -4n-2}{\{n(n+1)\}^2} \\\\ &=& \displaystyle \frac{-2(2n^2 + 2n+1)}{\{n(n+1)\}^2} \\\\ &=& \displaystyle \frac{-2\{2(n+ \frac{1}{2} )^2 + \frac{1}{2}\}}{\{n(n+1)\}^2} < 0 \\\\ \end{eqnarray*}

となり、f(n)は単調に減少します。

マスマスターの思考回路

a_nも単調に減少するならば、 a_n < 1 が仮に成立した場合、それ以降整数となることはないので、a_n < 1が初めて成立するまでのa_n の値を順に計算していけば結論が得られそうです。
しかしf(n)が単調に減少するからといって、a_nが単調に減少するかどうかはわかりません。
a_nが単調に減少するのは、a_n < a_{n-1}が常に成立するときであり、これはf(n) < 1と同値です。
f(n) は単調に減少することはわかっているので、f(n) < 1 が成立して以降、a_nは単調に減少することとなります。
f(n) < 1が成立する最小のnを求めましょう。

    \begin{eqnarray*}f(n) &<& 1 \\\\\cfrac{2(2n+1)}{n(n+1)} &<& 1 \\\\4n+2 &<& n^2 + n \\\\ n^2 -3n -2 &>& 0 \\\\\end{eqnarray*}

これをみたすn \geqq 2 における最小のn4なので、 n \geqq 4 のとき、 a_n < a_{n-1} となります。

マスマスターの思考回路

a_nが単調減少するようになるnは小さいので、 しらみつぶしに計算していく方法で解決できそうです。
余りにも調べる量が多くなってしまった場合は、またその時に別の方針を考えることにしましょう。

n = 1 のとき、

    \begin{eqnarray*}a_1 = \frac{_3 C _1 }{1!} = 3\\\\\end{eqnarray*}

n \geqq 2 のとき、a_n = \cfrac{2(2n+1)}{n(n+1)} \cdot a_{n-1} より、

    \begin{eqnarray*}a_2 &=& \frac{2 \cdot 5}{2 \cdot 3} \cdot 3 = 5 \\\\a_3 &=& \frac{2 \cdot 7}{3 \cdot 4} \cdot 5 = \frac{35}{6} \\\\\end{eqnarray*}

以降a_nは単調に減少します。

    \begin{eqnarray*}a_4 &=& \frac{2 \cdot 9}{4 \cdot 5} \cdot \frac{35}{6} = \frac{21}{4} \\\\a_5 &=& \frac{2 \cdot 11}{5 \cdot 6} \cdot \frac{21}{4} = \frac{77}{20} \\\\a_6 &=& \frac{2 \cdot 13}{6 \cdot 7} \cdot \frac{77}{20} = \frac{143}{60} \\\\a_7 &=& \frac{2 \cdot 15}{7 \cdot 8} \cdot \frac{143}{60} = \frac{143}{112} \\\\a_8 &=& \frac{2 \cdot 17}{8 \cdot 9} \cdot \frac{143}{112} = \frac{2431}{4032} < 1 \\\\\end{eqnarray*}

n \geqq 8 のときは、 0 < a_n < 1 となり、整数となることはありません。

以上から、n = 1, 2 となります。

プロフィール

-このサイトの記事を書いている人-

某国立大工学部卒のwebエンジニアです。
学生時代に塾講師として勤務していた際、生徒さんから「解説を聞けば理解できるけど、なぜその解き方を思いつくのかがわからない」という声を多くいただきました。
授業という限られた時間の中ではこの声に応えることは難しく、ある程度の理解度までに留めつつ、繰り返しの復習で覚えてもらうという方法を採らざるを得ないこともありました。
本ブログでは「数学の問題を解くための思考回路」に重点を置いています。
それらを通じて自らの力で問題を解決する力が身につくお手伝いができれば幸いです。

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