公式

【公式】直線のベクトル方程式について

ベクトルを用いて記述された図形に関する方程式をベクトル方程式といいます。

ベクトル方程式は、ベクトルに関する基礎知識を用いて図形を方程式化しているだけなのですが、初見ではとっつきにくい印象を与える分野かと思います。

方程式の形自体だけを丸暗記するのはどの公式でもおすすめしませんが、直線のベクトル方程式(特に線分のベクトル方程式)では次の二点が重要です。

  • 公式そのままの状態での使用頻度が高い。
  • 導出過程を理解しているという前提で未知のベクトル方程式の立式を要求される場合がある

以上の理由から、導出過程を十分に理解した上でベクトル方程式の形自体も暗記しておいてください。

マスマスターの思考回路

「方程式」を作るのですから、単純に暗記しただけではそれなりの難易度の問題には太刀打ちできないであろうことは予想がつきますよね?

どのように方程式を組み立てれば良いかという観点を大切にし、勉強にとりくみましょう。

ベクトルに関する基礎知識があればベクトル方程式は簡単に導出できるので、万が一ベクトル方程式を導出できないことがあれば、ベクトルに関する基礎知識の習得が十分でない可能性が高いと思われます。

その場合はベクトルの演算をしっかり復習しましょう。

【基礎知識】ベクトルの演算

それでは直線のベクトル方程式についてお話ししていきます。

直線のベクトル方程式

ある1点を通りあるベクトルに平行な直線のベクトル方程式

A(\overrightarrow{a}) を通り、\overrightarrow{d} に平行な直線上の任意の点 P(\overrightarrow{p}) のベクトル方程式は実数 t (媒介変数といいます)を用いて

    \begin{eqnarray*} \overrightarrow{p} &=& \overrightarrow{a} + t\overrightarrow{d} \\\\ \end{eqnarray*}

と表せる。

ある1点を通りあるベクトルに平行な直線のベクトル方程式の説明

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ベクトルの演算についての知識があれば、下の動画で直感的に理解できるかと思います。 赤線部分がベクトル方程式によって規定される直線になります。

まず点 O から点 A へ移動し、点 A から \overrightarrow{d} に平行でさえあればいくら移動しても目的の直線上に点 P が存在することとなります。(点 P が目的の直線を描画していると考えても良いでしょう)

ここでいう「いくら移動しても」という状況はベクトルの実数倍で実現することができます。
つまり t の値を変えれば、\overrightarrow{d} の方向に任意の距離だけ移動することができるということです。

ある2点を通る直線のベクトル方程式

A(\overrightarrow{a}),B(\overrightarrow{b}) を通る直線上の任意の点 P(\overrightarrow{p}) のベクトル方程式は実数 t を用いて

    \begin{eqnarray*} \overrightarrow{p} &=& (1-t)\overrightarrow{a} + t\overrightarrow{b} \\\\ \end{eqnarray*}

と表せる。

ある2点を通る直線のベクトル方程式の説明

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ある1点を通りあるベクトルに平行な直線と同様に考えることができますが、ある2点を通る直線のベクトル方程式には方向ベクトル \overrightarrow{d} は含まれません。
それは、通る二点が決まっているということにより、その点自身により方向が決定されるからです。

こちらは動画で直感的に理解することは難しいので、計算を用いて説明を行います。

ある2点を通るという条件は、ある1点を通るという条件を満たさなければなりませんので、ある1点を通りあるベクトルに平行な直線のベクトル方程式を利用することができます。つまり、

    \begin{eqnarray*} \overrightarrow{p} &=& \overrightarrow{a} + t\overrightarrow{d} \\\\ \end{eqnarray*}

が成り立ちます。

また方向ベクトル \overrightarrow{d} は、点 A(\overrightarrow{a}),B(\overrightarrow{b}) によるベクトル \overrightarrow{AB} で定義することができますので、

    \begin{eqnarray*} \overrightarrow{p} &=& \overrightarrow{a} + t\overrightarrow{AB} \\\\ \end{eqnarray*}

と表され、ベクトルの差を考えることにより、

    \begin{eqnarray*} \overrightarrow{p} &=& \overrightarrow{a} + t(\overrightarrow{OB} - \overrightarrow{OA} )\\\\ &=& \overrightarrow{a} + t(\overrightarrow{b} - \overrightarrow{a} )\\\\ &=& (1-t)\overrightarrow{a} + t\overrightarrow{b} \\\\ \end{eqnarray*}

と表せることがわかります。

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上のような計算を経れば、ある2点を通る直線のベクトル方程式が成立することはお分りいただけたかと思います。
直感的に理解することは難しいのですが、一応下の動画を確認しておきましょう。

ある2点を通る線分のベクトル方程式

ある2点を通る直線のベクトル方程式の媒介変数 t に定義域を与えることによって、ある2点を通る線分のベクトル方程式を規定することができます。

A(\overrightarrow{a}),B(\overrightarrow{b}) を通る線分上の任意の点 P(\overrightarrow{p}) のベクトル方程式は実数 t を用いて

    \begin{eqnarray*} \overrightarrow{p} &=& (1-t)\overrightarrow{a} + t\overrightarrow{b} ~~~(0 \leqq t \leqq 1)\\\\ \end{eqnarray*}

と表せる。

ある2点を通る線分のベクトル方程式の説明

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ある2点を通る直線のベクトル方程式を認めてしまえば、ある2点を通る線分のベクトル方程式は下の動画により直感的に理解できるかと思います。

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線分のベクトル方程式は扱う機会が非常に多くなりますので、これについては導出過程をしっかり理解した上で、式の形自体を丸暗記しておきましょう。

直線のベクトル方程式の説明の終わりに

いかがでしたか?

ベクトルは基礎概念の習得が非常に重要で、それさえ身につけていればベクトルという単元全体を理解しているといっても過言ではありません。

ベクトルだけに限ったことではありませんが、特にベクトルに対しては基礎を大切にしてください。

またベクトル方程式は、図形と方程式の単元で学んだ方程式で代替することが可能です。

よって、ベクトル方程式など使わずに図形と方程式の単元で学習した内容だけで問題を解いてしまえば良いのではないか?と考える方もおられるかと思います。(私もベクトル方程式を初めて学んだときにはそう思いました。)

しかし、それは平面図形に限られたことであって、空間図形を扱う場合には空間における直線の方程式のように、図形と方程式で学んだ知識でなくベクトルに頼らなければならない部分があるのです。

そして、ベクトルは平面でも空間でも同等に扱うことができるという強みを持っています。

ベクトル方程式ならびにベクトル自体は空間図形を扱うときにこそその力を発揮しますので、辛抱強くベクトルの学習を続けていただけたらと思います。

【基礎知識】平面上のベクトルのまとめ

プロフィール

-このサイトの記事を書いている人-

某国立大工学部卒のwebエンジニアです。
学生時代に塾講師として勤務していた際、生徒さんから「解説を聞けば理解できるけど、なぜその解き方を思いつくのかがわからない」という声を多くいただきました。
授業という限られた時間の中ではこの声に応えることは難しく、ある程度の理解度までに留めつつ、繰り返しの復習で覚えてもらうという方法を採らざるを得ないこともありました。
本ブログでは「数学の問題を解くための思考回路」に重点を置いています。
それらを通じて自らの力で問題を解決する力が身につくお手伝いができれば幸いです。

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