解法

【東大の入試問題を解説!】2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第4問

2018年度東大入試第4問目を扱います。それでは問題を見てみましょう。

2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第4問

2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第4問

マスマスターの思考回路

まずは条件1のことだけを考えます。
f(x)=bが異なる3つの実数解を持つためにはf(x)が極大値と極小値を持っている必要があります。
f(x)を微分して、f(x)極大値と極小値を持つための条件を求めましょう。

条件1について

f(x)を微分します。

    \begin{eqnarray*} f'(x) &=& 3x^2-3a^2 \\\\ &=& 3(x+a)(x-a) \end{eqnarray*}

f'(x)=0が異なる2つの実数解を持っていれば、f(x)が極大値f(-a)と極小値f(a)を持つことになります。
f'(x)=0の解はx=\pm aであり、問題文で与えられている条件からa>0なので、f'(x)=0は異なる2つの実数解を持つことがわかります。

マスマスターの思考回路

つまり、特別な条件を追加せずとも、f(x)は必ず極大値と極小値を持つということがわかりました。

f(x)=bが異なる3つの実数解を持つには、 極小値<b<極大値 の条件を満たしていれば良いので、

(1)   \begin{eqnarray*} f(a)&<&b<~~f(-a) \\ -2a^3&<&b<~~2a^3 \\ \end{eqnarray*}

となります。

マスマスターの思考回路

ここまでで条件1の処理は完了となります。
引き続き条件2を考えましょう。
f(x)=bが異なる3つの実数解を持ち、その実数解を\alpha < \beta < \gamma とするということなので、これを一度図にしてみましょう。\beta > 1はその後で考えれば良いでしょう。

条件2について

2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第4問

マスマスターの思考回路

x=1を図に追加したいのですが、\alphaと1の大小関係がわからない現状では、x=1を図に追加することができません。他にx座標についてわかっていることはf(x)が極値をとるときのxの値(x= \pm a)ですのでこれを図に追加しましょう。

2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第4問

マスマスターの思考回路

a>0つまり-a<0であることから、\alpha < -a < 1 < \betaの大小関係が成立することがわかります。
x=1を図に加えましょう。

2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第4問

マスマスターの思考回路

問題文で与えられた条件\beta>1はすでに図に反映させていますので、条件2に記述されていた内容はすべて処理済みです。

問題ではabの動きうる範囲を問われているので、この状態でabに対して成立している事柄を洗い出していきましょう。

今はx=1を図に追加した状態なので、1とabに対して成立する関係を求めれば良いでしょう。

y軸方向については、f(1)>bが成立していることがわかります。つまり、

(2)   \begin{eqnarray*} 1-3a^2>b \\ \end{eqnarray*}

であり、x軸方向については、-a<1<aが成立していることがわかります。つまり、

(3)   \begin{eqnarray*} 1<a \end{eqnarray*}

となります。

新たに求められた条件は(1)から(3)の3つです。これを下にまとめます。

    \begin{eqnarray*} \begin{cases} -2a^3 < b < 2a^3 \\\\ b<1-3a^2 \\\\ 1<a \end{cases} \end{eqnarray*}

この条件を満たすa, bを図示していきましょう。

結果を図示します

マスマスターの思考回路

図示する際には、各関数の位置関係を正確に把握している必要があります。
まず、b=-2a^3b=2a^3については原点でのみ交点を持つことは明らかなので、とりあえずこの二つの関数だけ図示してみましょう。

2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第4問

マスマスターの思考回路

a>0の範囲で、b=1-3a^2b=2a^3と1つの交点を持つことは明らかですが、b=-2a^3と交点を持つかどうかがわかりません。交点が存在するかどうかを求めましょう。

    \begin{eqnarray*} \begin{cases} b=1-3a^2 \\ b=-2a^3 \\ \end{cases} \end{eqnarray*}

を解きましょう。

    \begin{eqnarray*} 1-3a^2&=&-2a^3 \\ 2a^3-3a^2+1&=&0 \\ (a-1)(2a^2-a-1)&=&0 \\ (a-1)(a-1)(2a+1)&=&0 \\ a&=&1, 1, -\cfrac{1}{2} \\ \end{eqnarray*}

b=1-3a^2b=-2a^3a=1で重解を持つことがわかりましたので、この二つの関数はa=1で交わります。
b=1-3a^2を図に追加しましょう。

2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第4問

a>1であるので、(a, b)の動きうる範囲は、

a > 1 かつ、 -2a^3 < b < 1-3a^2であり、これを図示すると、上図の斜線部となります。(境界線は含まない)

プロフィール

-このサイトの記事を書いている人-

某国立大工学部卒のwebエンジニアです。
学生時代に塾講師として勤務していた際、生徒さんから「解説を聞けば理解できるけど、なぜその解き方を思いつくのかがわからない」という声を多くいただきました。
授業という限られた時間の中ではこの声に応えることは難しく、ある程度の理解度までに留めつつ、繰り返しの復習で覚えてもらうという方法を採らざるを得ないこともありました。
本ブログでは「数学の問題を解くための思考回路」に重点を置いています。
それらを通じて自らの力で問題を解決する力が身につくお手伝いができれば幸いです。

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