解法

【東大の入試問題を解説!】2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第3問

2018年度東大入試第3問目を扱います。
それでは問題を見てみましょう。

2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第3問

2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第3問

マスマスターの思考回路

まずは問題を把握するために、図をかいてみましょう

2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第3問

マスマスターの思考回路

PもQも動く点なので、このPとQのベクトルの和によって定義される点Rも動きます。

k \overrightarrow{OQ}はx軸に平行ですので、k \overrightarrow{OQ}は点Rをx軸方向に平行移動させるベクトルであるということがわかります。

平行移動させる対象(\cfrac{1}{k}  \overrightarrow{OP}によって定義される点)自体がどこにあるかわかっていないので、どの程度平行移動させるかは今は考える必要はありません。
平行移動させる対象がどこにあるかがわからなければ、平行移動先の点もわからないからです。

よって、今はQを無視します。

つまり、\overrightarrow{OR} = \cfrac{1}{k}  \overrightarrow{OP} であるものとして考えるということです。
そして、このときのRがどこにあるか(つまりRの軌跡)を求めましょう。

\cfrac{1}{k}  \overrightarrow{OP}によって定義される点の軌跡を求めます。

仮にP(p, p^2)と設定しているので、

    \begin{eqnarray*}\cfrac{1}{k}  \overrightarrow{OP} &=& \cfrac{1}{k}  (p, p^2) \\&=&  (\cfrac{p}{k}, \cfrac{p^2}{k}) \\\end{eqnarray*}

より、

(1)   \begin{eqnarray*}x &=& \cfrac{p}{k} \\\end{eqnarray*}

(2)   \begin{eqnarray*}y &=& \cfrac{p^2}{k} \\\end{eqnarray*}

とおきます。(1)より、

(3)   \begin{eqnarray*}p &=& kx \\\end{eqnarray*}

また、-1 \leqq p \leqq 1と(3)より、

(4)   \begin{eqnarray*}- \cfrac{1}{k} \leqq x \leqq \cfrac{1}{k} \\\end{eqnarray*}

(2)に(3)を代入すると、

(5)   \begin{eqnarray*}y &=& \cfrac{k^2x^2}{k} \\\\&=& kx^2 \\\end{eqnarray*}

(4)と(5)より、\cfrac{1}{k}  \overrightarrow{OP}によって定義される点の軌跡は、

(6)   \begin{eqnarray*}y &=& kx^2 ~~~~ (- \cfrac{1}{k} \leqq x \leqq \cfrac{1}{k})\\\end{eqnarray*}

となります。

マスマスターの思考回路

平行移動させる対象(\cfrac{1}{k}  \overrightarrow{OP}によって定義される点)の軌跡がわかったので、今まで無視していたQのことを考えられる状態となっています。Qについて考えましょう。

仮にQ(q, 0)と設定しているので、

(7)   \begin{eqnarray*}k \overrightarrow{OQ} &=& k(q, 0)\\\\&=& (kq, 0)\\\end{eqnarray*}

A(1, 0)であり、Qは線分OA上を動くので、0 \leqq q \leqq 1 より、0 \leqq kq \leqq kです。これと(7)より、
k \overrightarrow{OQ}は、x軸方向に最小で0、最大でkだけ平行移動させるベクトルです。

つまり、(6)の軌跡をx軸方向にkだけ平行移動させたときに通過する領域に点Rが存在し、その領域の面積が問題で問われているS(k)になります。

(6)をx軸方向にkだけ平行移動させた関数は、

(8)   \begin{eqnarray*}y &=& k(x - k )^2 \\\end{eqnarray*}

となります。

ここまでを図示してみましょう。まずは(6)の関数です。下の図のようになります。

2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第3問

ここに(8)のグラフも追加していきます。

kの値について場合分けを行う

マスマスターの思考回路

(6)の関数の定義域は- \cfrac{1}{k} \leqq x \leqq \cfrac{1}{k}ですので、(8)の関数の頂点が定義域内に含まれているときと、そうでないときに分けた方が良さそうです。

(8)の関数の頂点(k, 0)が定義域内に含まれているときは、k < \cfrac{1}{k}が成立するときなので、これを解くと、

    \begin{eqnarray*}-1 < k < 1 \\ \end{eqnarray*}

また、k > 0であることを合わせて、

    \begin{eqnarray*}0 < k < 1 \\\end{eqnarray*}

となります。

0 < k < 1のとき

図は下のようになります。

2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第3問

斜線部分がS(k)を意味しています。
斜線部はx=\cfrac{k}{2}において対称なので、求める面積S(k)は、

    \begin{eqnarray*}S(k) &=& 2 \left [\int_{\frac{k}{2}}^k kx^2 dx +\int_k^{\frac{1}{k}} kx^2 -k(x -k)^2 dx +\int_{\frac{1}{k}}^{\frac{1}{k} + k} \frac{1}{k} - k(x -k)^2 dx\right ] \\\\&=& 2 \left [\int_{\frac{k}{2}}^{\frac{1}{k}} kx^2 dx -\int_k^{\frac{1}{k} + k} k(x -k)^2 dx +\int_{\frac{1}{k}}^{\frac{1}{k} + k} \frac{1}{k}dx\right ] \\\\&=& 2 \left [\cfrac{k}{3} \left(\cfrac{1}{k^3} - \cfrac{k^3}{8} \right) -\cfrac{k}{3} \left\{ ( \cfrac{1}{k} + k - k )^3 - (k-k)^3 \right\} +\cfrac{1}{k} \left\{ (\cfrac{1}{k} + k) - ( \cfrac{1}{k} ) \right\}\right ] \\\\&=& 2 \left [\cfrac{k}{3} \left(\cfrac{1}{k^3} - \cfrac{k^3}{8} \right) -\cfrac{k}{3} \left (\cfrac{1}{k^3} \right ) + \cfrac{1}{k} \left(k \right)\right ] \\\\&=& 2 \left [- \cfrac{k^4}{24} + 1\right ] \\\\&=& 2 - \cfrac{k^4}{12} \\\\\end{eqnarray*}

となります。

マスマスターの思考回路

次は 1 \leqq k のときを考えますが、kが増加していくと、y=k(x-k)^2のグラフは無限にx軸の正の方向に動いていきます。
その過程で -\cfrac{1}{k} + k\cfrac{1}{k}の大小関係が逆転するので、これについて場合分けを行いましょう。
-\cfrac{1}{k} + k < \cfrac{1}{k}を満たすk(k \geqq 1)は、1 \leqq k < \sqrt 2となります。
次はこの場合を考えましょう。

1 \leqq k < \sqrt 2のとき

図は下のようになります。

2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第3問

このときも、斜線部分はx=\cfrac{k}{2}において対称なので、求める面積S(k)は、

    \begin{eqnarray*}S(k) &=& 2 \left [\int_{\frac{k}{2}}^{\frac{1}{k}} kx^2 dx +\int_{\frac{1}{k}}^k \frac{1}{k} dx +\int_k^{\frac{1}{k} + k} \frac{1}{k} - k(x -k)^2 dx\right ] \\\\&=& 2 \left [\cfrac{k}{3} ( \cfrac{1}{k^3} - \cfrac{k^3}{8} ) +\int_{\frac{1}{k}}^{\frac{1}{k}+k} \frac{1}{k} dx -\cfrac{k}{3} \left\{ ( \cfrac{1}{k} +k-k)^3 - (k-k)^3 \right\}\right ] \\\\&=& 2 \left [\cfrac{k}{3} ( \cfrac{1}{k^3} - \cfrac{k^3}{8} ) +\frac{1}{k} (\frac{1}{k} + k-\frac{1}{k}) - \frac{k}{3} (\cfrac{1}{k^3} )\right ] \\\\&=& 2 \left [- \cfrac{k^4}{24} + 1\right ] \\\\&=& 2 - \cfrac{k^4}{12} \\\\\end{eqnarray*}

となります。

マスマスターの思考回路

0 < k < 1のときと同じ結果になってしまいましたので、実際には場合分けする必要はなかったのかもしれません。とりあえず結果は求められたので良しとしましょう

\sqrt 2 \leqq kのとき

図は次のようになります。

2018年度入試 東京大学 前期日程 数学(理科) 第3問

このときも、斜線部分はx=\cfrac{k}{2}において対称なので、求める面積S(k)は、

    \begin{eqnarray*}S(k) &=& 2 \left [\int_{\frac{k}{2}}^k \frac{1}{k} dx +\int_k^{\frac{1}{k} + k} \frac{1}{k} - k(x-k)^2 dx\right ] \\\\&=& 2 \left [\int_{\frac{k}{2}}^{\frac{1}{k} + k} \frac{1}{k} dx -\cfrac{k}{3} \left\{ ( \cfrac{1}{k}+k-k)^3-(k-k)^3 \right\}\right ] \\\\&=& 2 \left [\cfrac{1}{k} \left\{( \cfrac{1}{k} +k)-\cfrac{k}{2} \right\} -\cfrac{k}{3} (\cfrac{1}{k^3})\right ] \\\\&=& 2 \left [\cfrac{1}{k} \left( \cfrac{1}{k} + \cfrac{k}{2} \right) - \cfrac{1}{3k^2}\right ] \\\\&=& 2 \left( \cfrac{1}{k^2} + \cfrac{1}{2} -\cfrac{1}{3k^2} \right) \\&=& 2 \left( \cfrac{2}{3k^2} + \cfrac{1}{2} \right) \\&=& \cfrac{4}{3k^2} + 1 \\\\\end{eqnarray*}

となります。

場合分け結果をまとめると

    \begin{eqnarray*}S(k) = \begin{cases}2 - \cfrac{k^4}{12} & (0 < k < \sqrt 2) \\\\\cfrac{4}{3k^2} + 1 & (\sqrt 2 \leqq k) \\\\\end{cases}\end{eqnarray*}

となります。

極限値は、

    \begin{eqnarray*} \displaystyle \lim_{k \to +0} S(k) &=& \displaystyle \lim_{k \to +0} 2 - \cfrac{k^4}{12} = 2 \\\\ \displaystyle \lim_{k \to \infty} S(k) &=& \displaystyle \lim_{k \to \infty} \cfrac{4}{3k^2} + 1 = 1 \\\\ \end{eqnarray*}

となります。

プロフィール

-このサイトの記事を書いている人-

某国立大工学部卒のwebエンジニアです。
学生時代に塾講師として勤務していた際、生徒さんから「解説を聞けば理解できるけど、なぜその解き方を思いつくのかがわからない」という声を多くいただきました。
授業という限られた時間の中ではこの声に応えることは難しく、ある程度の理解度までに留めつつ、繰り返しの復習で覚えてもらうという方法を採らざるを得ないこともありました。
本ブログでは「数学の問題を解くための思考回路」に重点を置いています。
それらを通じて自らの力で問題を解決する力が身につくお手伝いができれば幸いです。

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